oiron

 

■ 2016年11月:KEY WORD サンクコスト

 今月のオイロン通信は身近にある重要な事柄を題材にしました。皆さんも同じ体験をしていると思います。高価なものを買った時です。私の場合にはテレビでした。25万円のテレビを買って、映像が乱れるようになりました。保証期間も過ぎていたので修理に出すと5万円程の費用がかかると言われ、5万円では同じ程度のテレビは買えないだろうと、修理に出しました。暫くして前回と異なる場所が故障し修理に出しましたが、今度はテレビの心臓部分で12万円かかると言われて、新品のテレビを買うことにしました。最初の故障時に分かっていれば、最初から新品を購入していたのに!5万円が忘れられない。この費用5万円の事を埋没費用と言います。

 映画の前売券を1800円で買い、当日映画館に着き、途中でチケットを落としたことに気が付きました。他にも気にかかる映画を上映していたので、チケットを再度1800円で買い、入場しました。しかし、10分程見ていたら思ったほど面白く無く、気分も悪くなってきました。最後まで見るには後120分あります。映画館を出れば時間は有効に使えますが、チケット2枚分の3600円は埋没費用となってしまいます。

 プロジェクトが進み出した途中で、このプロジェクトには想像を絶する費用がかかり、最初の試算が甘かった事に気付いても、今までの時間と費やした費用を考えるとなかなか諦め切れないことがあります。埋没費用として諦められず、ズルズル引きずって大きな損失になります。似た話は、投資でもあります。過去に非常に良かった株や投資信託の金融商品を勢いのある時買い込み、その後業績が少しずつ下がり、今手放すと○円の損失が出るので、原価割れをしたまま持ち続けます。周りの人から見れば不合理かも知れませんが、本人は、そこで損を切ってしまうと、過去の自分の失敗を認めてしまうことになり、簡単ではありません。これも埋没費用です。

 埋没費用の事例が出てきましたが、経済学や経営学では「サンクコスト」と言い、既に支払ってしまって、もう二度と手元に返ってこない費用・労力・時間の事で、経営者や部下を持つ役職の人には重要な法則です。

 日本人はサンクコストが受け入れられない民族だと言われています。それは「もったいない」思想が良いものとされている土壌があるからです。簡単に成功のために過去の損失を知り捨てる事が難しい人種です。しかし、私は「サンクコスト」と「もったいない」は根本で違っていると思います。面子にこだわり従来のやり方を変更する事ができない、仕様を変更しすぎて目標としていたよりも多くのコストが掛かってしまうのに中止できず、利益が上がらないまま戦略を変更することができないなど、これらにかかった費用がサンクコストです。何故、中止して、新しいシステムを取り入れないか?それは、心理的に人間は得をすることよりも損をすることの方に大きなダメ-ジを受ける動物だからです。

 例えば、誰かから1万円を貰った場合と、いつの間にか財布から1万円が無くなってしまった場合では、どちらが心に強く長く残るでしょう!100円の得より、10円の損失が嫌いではありませんか?個人であれば、個人の埋没費用で済むかもしれませんが、会社の方針運営ならば、経営者の責任は大きなものになります。サンクコストから抜け出せない人や企業は、将来受けるであろう心理的ダメ-ジに対して耐性ができていないと見る事ができます。頑固で何があってもやり直しは絶対しないタイプや失敗を認めないタイプの人、自分のやり方だけが正しいと思い込んでいる人は、本当は自分のせいで損をしたというダメ-ジを避けようとしている、メンタルの弱い人かもしれません。

 もし今、職場のことや、やっている仕事が上手くいかなくて悩むことがあったら、このサンクコストが自分の中で余計な壁を作っていないかを振り返ってみて下さい。損切りをして将来いきなり得をすることはなくても、少なくともそれ以上損をしないのだという単純な式で、もう一度、現状を計算し直してみてはいかがでしょうか?(典)

oiron

あきらめたらあかん/伊藤典男 著

ご希望の方には無料で差し上げます(送料のみご負担ください)。

運営事務局(0480-32-5737)か、サイトのお問い合わせフォームにその旨を明記してご連絡ください。