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■ 2014年02月:KEY WORD 寄席で学ぶ

 私は、寄席が好きで年に数回演芸場に向かいます。話の間の取り方や使えるジョークを学んだり、頭の中を空にしたりするためです。私の住まいからは2ヶ所の寄席に行くことができます。一つは浅草の浅草演芸場、もう一つは上野鈴本演芸場です。最近は鈴本演芸場が殆どです。浅草演芸場は狭い劇場で、独特の臭いがあります。戌年の私は鼻が利くのかも知れません。演芸でも上方と東京では大きく異なります。上方は吉本興業の「なんばグランド花月」が中心で、演芸と言えば漫才を指しますが、東京は落語が主流です。東京では漫才や漫談、手品、太神楽や曲芸は色物といいます。出演芸人の番組表が演芸場の前に掲げてありますが、その名前が色物芸人さんは赤文字で書かれ、落語家さんは黒字で書かれています。ここから色物芸人と言われています。この色物芸人さんは、寄席には無くてはならない存在になっています。落語対色物の比率は7:3の割合で構成されています。落語には現代風の物もあれば、古典もあります。聞いている客からみれば、飽きてくる、ちょうど良い頃に色物(短い)が入り、場が締ります。また必ず、トリ(大御所の師匠)の前は色物で客の頭を休めて、「トリ」の落語で、想像力を全開させるのです。上方と東京での地域によって笑いの要望が大きく違う(地域差)、演芸の組み立てによってお客に対する笑いの浸透が違う、トリにモベ-ションを上げていく等、寄席では多くの事を学ぶことが出来ます。

 今年は初席(元日から10日まで)を2度見に行く機会がありました。初席は通常の寄席とは異なり、顔見世興行です。中入りの休憩時間を含めて、約5時間40分に23人の芸人さんが入れ替わり芸を披露します。色物さんは5~6分、落語家さんは10分、トリが20分です。2回目の初席を見て、ここにも学ぶ場面がありました。出演される芸人さんは、1回目の初席と9割同じメンバ-でした。これは演芸場では当たり前ですが、その中の8割が同じ「ネタ」(出し物)でした。中には一字一句、冗談、照れ笑い、小さな仕草までも、1回目の講演と同じ芸人さんもいました。初回は笑えても、2回目となると笑えませんし、「研究しろよ」と思ってしまいます。枕(冒頭の部分)だけでも変えるか、話の中味を少し変えるだけでもいい、芸人らしいプロ根性を出して欲しかったと思います。

 出演者の中には、昨年の初席と同じネタで勝負していた芸人もいました。12月の出し物で「芝浜」があります。落語ファンは古典落語の芝浜を聞きたくて、寄席に足を運びます。40分の長編です。演じる芸人さんで味が違います。これは同じでいいのです。初席は年始と同様で同じメンバ-が努めます。2度・3度初席を訪れるお客もいます。同じ話でも工夫されていれば、お客も納得します。判で押したように同じであれば熱は冷めてしまいます。

 しかし、トリの三遊亭圓歌師匠(先代の歌奴)は違いました。1月10日で85歳の大師匠ですが、今回も同じ出し物ではありませんでした。私は何度も拝見しました。一部ダブる内容もありますが、必ずアレンジしてあります。「山のあなたの・・・」で昭和の落語代表作を作った人です。客席の客の年代が老けていれば「山のあなた・」を交えて、修学旅行の学生さんが多い寄席では、現代的な笑いで観客を1つにします。落語には最後に「おち」がありますが、おちが同じでも顔の表情が違います。ベテランと言ってしまえばそれまでですが、絶えず場を読む感性と、出し物の引き出しの多さには感服させられます。

 我々は人前で話す事が商売ですが、説明会の内容、会議の内容、教え方の内容、面談の内容等、マンネリ化していませんか?自分は気づかなくても相手は覚えています。うけ狙いの話より、本当の経験が人の心を動かします。経験は内よりも外の方が多いものです。
 色々な面で、考える事・学ぶ事の多い今年の初席でした。(典)

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あきらめたらあかん/伊藤典男 著

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