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■ 2018年03月:KEY WORD 伝染

 「伝染する」と聞くと伝染病を頭に置く人が多いでしょう。しかし、今回の伝染は、学力や肥満が伝染するという話です。本当に肥満は伝染するの?と思うでしょうが、「実践行動経済学」(大阪大大竹教授)では、多くのページを割いて研究がなされています。決して肥満の病原体があるわけではなく、「人間は無意識に他人の行動を真似する性質がある」から、肥満は伝染することになるのです。例えば、数人で食事に行き、明らかに肥満に繋がるような食材を何人かが注文し食すると、その人達の食習慣に引きずられて食べてしまいます。人間は他人の行動に同調してしまいがちです。人類は集団で生活し、仲間たちと協力することで生き延びてきたため、引きずり込まれた方が生存に有利になるということが根本にあるのです。前例の人達が食後にデザ-トとして、ケーキ類を注文します。本人は今ダイエット中であっても、目の前で仲間が次から次へと手を伸ばし、友人から「食べないの?」と言われれば、肥る事が分かっていても、自分の痩せるという利益を得る喜びより、仲間を失う恐怖の方が大きいと思い、手を出してしまいます。よく意志の強さと言いますが、我々の祖先が今を生き抜くことに力を入れた結果が、現在の我々のDNAに取り込まれているのでしょう。

 英国で実際にあった話ですが、税金の滞納者に困り果てて、役所から「ほとんどの納税者が期限内に納税を済ませている」と伝える手紙を送ったところ、納税率が上がったそうです。人間の同調性に働きかけた結果です。江戸いろはかるたに「門前の小僧習わぬ経を読む」があります。寺の門前に住んでいる子どもは、いつも僧のそばにいて、日頃から僧の読経を聞いているから、いつの間にか般若心経ぐらいは読めるようになります。これも環境からの伝染でしょう。よく似た例に「孟母三遷」があります。孟子の家族は、はじめ墓場の近くに住んでいましたが、孟子は葬式ごっこをして遊ぶので、市場の近くに引っ越しました。すると孟子は商人の真似ばかりして遊ぶので、次は学校の近くに引っ越します。すると孟子は礼儀作法の真似事をしたり、文字を書いたりしました。それを見た母親は「この地こそ子どもに相応しい」と言って、そこに落ち着いたという故事です。これも伝染です。

 時期的に新しい学年になります。受験学年の生徒は、目標校を設定し、1年間の成果が来年の春に表れます。合格の2文字か、逆の3文字になるかは、この1年にかかっています。目標設定にも、今まで話した事が大きな位置を占めています。運動でサッカー、野球を目指すなら、それらの強豪チ-ムのある学校を狙うべきです。大学を目指すなら、今は少し無理であっても、できるだけ学力上位校を選ぶべきです。現状では高校にも、大学にも学力格差があります。学力上位校には、上位校が誇れる授業が待っています。能力を磨く友人、仲間がいます。学力も必ず伝染します。周りの友人が勉強していれば、自ずと机に向かう時間が多くなります。これも仲間と協力して生き延びてきた習性です。人間は他人の行動に同調してしまうのです。以前教えた中3の女子生徒で、春の面談時に、「教師になりたい」と言っていた生徒がいました。しかし、当時の学力では教職につける高校は難しく、教師になりたいなら少なくとも2ステップ上の高校に行かなければならない状況でした。そこで私は、彼女に2ステップ上の学校を訪問して、正門に立って写真を撮り、写真を大きく引き伸ばして、机の前に貼るよう指導しました。それ以後、彼女の成績は伸び、2ステップをクリアし、受験時には県内トップ校に合格の2文字を持って報告に来ました。数年後、たまたま町で会った時「今、公立高校の数学の教師をしています。」と言っていました。学校訪問で在校生の姿を見て、正門に立った自分の写真を毎日見て、自分のあるべき姿を頭に描き、仲間に刺激を受け、目標を達成した彼女は、2人の子どもの母親でした。彼女の姿勢はおそらく子どもにも伝染するでしょう。学力、肥満だけでなく我々の周りには色々なものが伝染します。怠け癖も!(典)

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あきらめたらあかん/伊藤典男 著

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