ニューヨークの街を歩くジェイク・ギレンホールが身にまとっていたのは、雪や嵐の日の救世主ともいえるザ・ノース・フェイスのヌプシジャケット。なぜこの定番ダウンジャケットがいまだに人気なのか? UK版『GQ』エディターがその理由を探った。
先月、米・ニューヨークで、ジェイク・ギレンホールがシンプルな黒いダウンジャケットを着ている姿が目撃された。グレージュのゆったりしたスラックスとAdidasの白いスニーカーを合わせたこのルックは、フィンテックで成功した億万長者さながらに見えた。
もしこれが別のダウンジャケットであれば、特に記事にする必要すらなかったのかもしれない。ロゴを配した胸元、速乾性に優れたリップストップの表地、そして、グースダウンの中綿が特徴的なザ・ノース・フェイスのヌプシ。その名前はネパールにあるエベレストの姉妹山に由来し、登山家やアメリカ海兵隊からの意見を取り入れて1996年に誕生した。以来、セレブリティからシリコンバレーの技術者まで、多くの人に愛用されるアウターとなった。
ヌプシはロングセラーであるうえに、過去20年間で同分野のどのアウターウェアよりも高い支持を得ていることを証明してきた。エルメスのバーキンやカルティエのタンクのように、ヌプシは世界的なファッションECプラットフォームのLyst内で、2021年の最も人気なアイテムランキングの1位を獲得している。ジャケットの検索数は前月比150%と急増し、eBayでは「ザ・ノース・フェイス」が3秒に1回検索されていることがデータからわかった。
胴体部分へ巧みに組み込まれた断熱技術を考えると、このアウターは驚くほど手頃な価格だ。ロンドンの老舗ブティック、Brownsのメンズウェアバイヤーであるジョー・ブラナーは、次のようにコメントしている。「この製品は本当に高性能で、その点はとても重要です。そして雪山用にデザインされたにも関わらず、リーズナブルな価格帯です」
市場価格は比較的安価ながら、ヌプシは多くのセレブリティに長年愛されてきた。90年代にはヒップホップ界の伝説的存在であるLL・クール・Jとメソッド・マンが真っ赤なヌプシで注目を集め、それ以前にはジェニファー・アニストンとハル・ベリーがこのスタイルをよりグラマラスなアイテムへと昇華していた。最近ではケンダル・ジェンナー、ジャレッド・レト、セバスチャン・ベア=マクラード、ピート・デヴィッドソン、ベン・アフレックなどが、スーパーでの買い物や飛行機での移動時など、様々なシチュエーションで愛用している。
熱視線を送っているのはセレブだけでなく、有名ブランドも同様だ。GucciはTikTokでザ・ノース・フェイスとのコラボレーションを発表し、Maison Margielaも同じくコラボレーションを発表。Supremeも定期的にコラボレーションを行っている。
このシンプルな“極暖アウター”が、世界中のファッションフリークを魅了し続ける理由とは何なのか? 世界最大級のECサイト、Matches Fashionのメンズウェア部門の責任者であるダミアン・ポールによると、価格とスタイルだけでなくウェルネスへの関心増加も関係しているいう。ポールは次のように語る。
「2022年春夏シーズンのバイイングでは、ヌプシを筆頭にザ・ノース・フェイスは250%以上増加しています。ウェルビーイングは我々の男性カスタマーにとって優先事項であり、テクニカルウェアは今や日常着の一部となっているのです。こういった高性能アイテムは、スタイリッシュさと機能性を兼ね備えています。ザ・ノース・フェイスは機能面だけでなく、デザイン性も素晴らしいのです」